『すべて真夜中の恋人たち』

久しぶりに本のお話です。
川上未映子さんの小説を読みました。

川上さんの流れるような文体が、とても好きです。
この本では、漢字の使い方にも、かなり配慮されているように感じました。

主人公は30代半ばで、フリーの校閲者をしている、入江冬子

(この名前、ひょっとして昔、物議をかもしだした渡辺淳一さんの小説の、通称「愛ルケ」に登場する女性と同じ名前?と気になったのですが、調べてみたら、あちらは入江冬香さんでした)

冬子は、あまり人との交流を好まず、一人で淡々と暮らしています。
おしゃれにも無頓着で、仕事だけやってるような生活に、あることから少し変化が訪れます。

それは、ふと目にとめたカルチャーセンターのチラシを見て、その申し込み会場に行ったことでした。
そこで、ある50代後半の男性、三束と出会います。

この男性についての描写があいまいで、人物像が最後まではっきりしません。
ひょっとしたら、作者の意図なのかもしれませんが。

最初は、週に1~2回ほど会って、お互い、とつとつと話すだけだったのに、やがて男性の誕生日に、一緒にレストランに行くことになります。

初めてのデートへの盛り上がり方は、静かな描写でしたが、とても素晴らしかったです。
何にも興味を示さなかった冬子が、変身していきます。

中でも、冬子の視点で綴られるレストランの様子は、彼女の高揚した気持ちが伝わってきて、とても素敵でした。

「つきあたりにある黄色に塗られた細長い扉をあけてゆっくりとなかに入ると、部屋中のいたるところにキャンドルの灯がきらめいていて、わたしは思わず息を飲んだ。白いクロスのかかったテーブルにも真鍮の燭台がみっつもおかれていて、部屋の壁に左右対称に設置された飾り棚にも、太いのや白いのや、薄い黄色のやブルーのや、長いのや、それはもう様々な種類のキャンドルが思い思いにオレンジ色の小さな灯をいっせいにつけて、ささやくようにゆれているのだった。」

そして、デートの後に起こる、女友達、とのぶつかり合いは、幸せいっぱいの気持ちから一転、暗黒世界に突き落とされるような迫力で展開されます。

私には、恋愛よりも、この女友達のとの関係の方が面白く思えました。

女同士が、負の感情をされけ出して激しくぶつかったら、そのままケンカ別れしてしまうところなのですが、友人関係はそのまま続いていきます。そういうところが、好ましい。
二人とも、お互いをそのまま受け入れています。

生きている以上、いくら周囲との人間関係を積極的に持とうと思わなくても、何らかの関係は持ちながら生きていかざるをえません。

この本は恋愛小説というよりも、恋愛を含む孤独な女性の気持ちの動きを、繊細にリズムよく、強弱をつけて描いた本のように感じました。

冬子さんの気持ちに、部分的にも共感できれば、結構楽しめる小説だと思います。


すべて真夜中の恋人たち
講談社
川上 未映子

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この記事へのコメント

2012年02月08日 04:28
「人間関係」・・・
楽しいし 難しいですね ・・・
できれば いい方ばかりだと いいのですが ・・・
そうもいかず ・・・
きっこ
2012年02月08日 08:43
翔おやじさん、おはようございます!
いつもありがとうございます。
翔おやじさんのお仲間は、楽しい方々がたくさんいらっしゃって、
本当に羨ましいです!
でも、すべてそうとはいかないのが、ややこしいですね。
またその「ややこしさ」に味があったり。
正も負もすべて大らかに味わえたらいいのですが、
私は狭量ゆえ正ばかりを求めてしまいます。^_^;
きっこ
2012年02月08日 08:46
気持玉を入れていただいて、
ありがとうございました!
サンディ
2012年02月08日 21:59
きっこさん、すばらしい書評でうらやましいっ。私はそこまで読みこめませんでした。が、三束という人の人物像、確かによくわかりません。私が一番もやっとしたのはそこかな。惹かれる理由がわからないし、彼の気持ちはさらにわからない。
最後、聖の選択に、ちょっときぼうが持てて、そこだけが救いな気がしちゃいました。冬子はこれから変われるのでしょうか。また新しい恋できるのかな。三束さんは、好きというより、ただ、そういう対象がずっといないから、無理矢理そういう対象にもっていっただけな感じがしました。まあ、恋愛なんて、そんなもんかもしれませんが。
きっこ
2012年02月09日 09:27
サンディさん、おはようございます!
ええっ?本当ですか?ありがとうございます。
川上さんの本は、いつも内容が想像つかないし、感想もつかみどころがないですよね~。(^^)
確かに、タイトルに「恋人たち」とあるのに、恋愛小説を読んだ感じがしませんでした。
普通の恋愛小説だと、読者も一緒にその男性に惹かれてドキドキできるんだけど、三束さんってどんな人なのか、さっぱりわからない。
最後に彼が正体?を明かすところがありますが、その辺もだから何?って感じでインパクトがありません。
冬子さんの恋心もとても不思議です。高校時代、心を通わせたと思ってた唯一の友人に再会したのに、現在の彼女には、どうしようもなく自分が軽く見られてるって気づいて、そこから孤独に陥り、三束さんに傾いていったように思えました。
寂しい時には、とにかく自分と言葉をかわしてくれる人に、惹かれていったりするのかもしれませんね。
きっこ
2012年02月10日 18:07
気持玉、ありがとうございす!

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